「ステレオの一部はコロンビア・カーブで録音されているのは本当か?」というお話。
一部でもりあがっているらしいのが「80年代近くまでコロンビア・カーブで製作されたレコードがあり、コロンビア・カーブで聞くと音がいいですよ!これって本当ですか?」
最近、ちょこちょこ言われるのでちょっと調べてみました。
聴かずに考察するのもいかがなものかと思いますのでたった2枚ですが自分でも試聴しました。
使用した機材はVenetor VT-MPEQ モノラルレコード専用マルチカーブ・イコライザアンプ。
(仕様上、ステレオをモノラルにミックスした形になります)
Bob Dylanの『Highway 61 Revisted』
高い音圧はなくなるものの確かに音が変わって見通しが良くなってすっきり、聞きやすくなりました。
ガッツはなくなりますが、これはこれで良いですね。この音、好きです。
これはコロンビア・カーブの方が低域の補正、高域の補正ともRIAAに比べて浅いからです。
(他のも少し聞きましたがたいていのアルバムをコロンビア・カーブで聞くとすっきりして音が良くなった?ように聞こえますよ)
だからといってこれが本当にコロンビア・カーブで録音されたものと考えてよいのでしょうか。
試聴した音から考えると「コロンビア・カーブで製作説」の気持ちも分かるのですが「コロンビア・カーブ説」が正しいのであれば製作したアーティストもエンジニアもプロデューサーも浮かばれないですよね。
だって彼らは最終チェックをRIAAカーブの装置で決めているはずです。
アーティストやプロデューサーがサンプルを持って帰って自分の家で聞いたら製作したときの音と違うなんてことがあったら大変ですよね。
しかも45/45方式のステレオはおおよそ初期からウエストレックス社のカッティング・マシンをつかっていると思われます。
そのマシンというか、ステレオの規格自体がRIAAカーブですからそれをわざわざ変更するでしょうか。
特にコロンビアはステレオ・レコードを強く推進していた会社ですから既にRIAAカーブ規格が確定しているものをわざわざ音が変わってしまうコロンビア・カーブで録音するなどということはありえないと思います。
Bobby Hutcherson 『Happenings』
ルディ・ヴァン・ゲルダー(以下ヴァン・ゲルダー)の録音についてです。
ブルーノートがAESカーブからRIAAカーブに移行したのが1956年頃と言われています。アルフレッド・ライオンが変更を希望したのか、それともヴァン・ゲルダーが変更したのか分かりませんが音にこだわりのあるアルフレッド・ライオンですから、変更後にヴァン・ゲルダーが録音し、カッティングしたものはすべてRIAAカーブでしょう。
ヴァン・ゲルダーが既に統一されたRIAA規格以外で会社毎にカーブを設定してカッティングを行ったと考える人はいないと思います。
ですのでブルーノート、プレスティッジ、ヴァーヴのデッドワックスに「Van Gelder」刻印があるタイトル、インパルスのデッドワックスに「Van Gelder」刻印があるタイトルはRIAAカーブです。
それ以前に録音したブルーノート、プレスティッジの諸作で「RVG」刻印のあるものはAESと考えるのが妥当だと思われます。
まあRIAAカーブに移行した年はもう少し後になるかも知れませんが、ステレオ盤を製作する際にはRIAAカーブでのカッティングで間違い無いでしょう。
ただしブルーノートにしろプレスティッジにしろ50年代にAESカーブで製作された物が56年以降すぐにRIAAに切り換えたとは考えられませんので再プレスなどはAESカーブのままだったりする可能性は大きいでしょう。(プレスティッジの裏面に「RIAA」と書かれていてもスタンパーが変わっていないし…確認してないけど)
ブルーノートの聴感ったってコンプとイコライジングでぐりぐりになった強力にジャズっぽいヴァン・ゲルダーの音は摩訶不思議なのでカーブなんてどうでもいいので良く聴ければもう何でもいいやという気もしますが…
問題は当時の音作りと現在の音作りが違うと言うことと、当時のモニター・システムと現在の聴くシステムが違うということになると思います。
音作りですが昔はSP時代からの流れで前に、前に出てくるサウンド、現在は若干後ろに定位するサウンドだと思います。(極端すぎる説明ですが…)
モニター・システムも昔は当然のことながら現在より低音も高音も出ないシステムです。
高音、低音ともブーストしたサウンドこそが当時は普通に聴けたのかも知れません。
そう考えると当時の試聴されたカートリッジ、スピーカーなどを使ってチェックしてみないとそのカーブが正しいのか分かりにくいということがあります。
制作者がどのような意図をもって音を作り込んでいったのかどうかが私たちリスナーには分からないのでイコライザー・カーブを聴感で決定することはできないのです。
くり返しになりますが、リスナーがRIAAカーブの装置で聴くのに、制作者の意図がリスナーに伝わらないコロンビア・カーブでカッティングするなどということはありえません。
自分の耳より普通に製作システムで考える事が正しいと思います。
もちろんコロンビア・カーブで聞くと音が良く聞こえる場合があることを否定しているわけではありません。
それぞれの方の好みがありますから。
自分はステレオ盤は「RIAAカーブの製作で間違いなし!」と考えますがこれを読んだ皆さんはどう思われたでしょうか?
「たかだか趣味ですのでお好きな様に!」と書きたいところなのですが…アーティストやプロデューサー、そしてレコード会社のことを考えるとさすがにそうは言えないので、誤ってコロンビア・カーブ派になってしまった方はRIAAカーブ派に寝返って頂きたい!
そんなことあるわけないですよ〜! カム・バ〜〜〜ック!
試聴で使用した機材はこちら
音質も素晴らしいので気になる方は是非ご検討下さい。
試聴記事はこちら
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カーブについて詳しく知りたい方はこちらに記載がありましたのでどうぞ
http://www.ann.hi-ho.ne.jp/aria/amp/EQ-curve.htm